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2018年10月16日

防衛機制







フロイトによる防衛機制



抑圧

repression

 受け入れがたい本能的衝動が著しい苦痛や不快感を引き起こすとき、

これを意識から締め出し隔離することで、自我を守ろうとする試み。

たとえば、幼少期のトラウマ体験の記憶は、抑圧され意識されないだけでなく、

修正されることも癒されることもないまま、

幼少期の強烈さをそのままに心の奥深くに押し込められてしまう。





反動形成

reaction formation

 自我にとって受け入れがたい本能衝動の意識化を防ぐために、

その衝動とは反対方向の態度を過度に強調する機制のことである。

たとえば、心の奥底では強い憎しみを抱いている相手に対し、

敢えて親切に振る舞うことなどである。





退行

regression

 自我が衝動や葛藤についての不安から自らを守るために、

現在の状態より以前の状態へ、あるいはより未発達な段階や逆戻りすることである。

一般的に発達の観点からみた「子ども返り」と呼ばれる現象である。

以前の行動様式に退却・避難することで、衝動や葛藤を感じないようにする。

たとえば、弟あるいは妹が産まれ、母親がその赤子の世話をするのをみて、

先に産まれた子どもが不安や脅威を感じ、赤ちゃん返りする場合などがある。









隔離(分離)

isolation

受け入れがたい感情や衝動と、

思考や行為、意識内容、観念などを切り離すことをいう。

たとえば、何度も施錠など確認行為を繰り返したり、

衝動的に誰かを殺してしまうのではないかと考えて

頭から離れなかったりする強迫性障害では、

その特有の強迫的・反復的な行為や観念により、

受け入れがたい感情を切り離しているとされる。





打ち消し

undoing

 過去の思考・行為に伴う罪悪感や恥の感情を、

それとは反対の意味を持つ思考

ないしは行動によって打ち消そうとすることである。

たとえば、相手を非難したあとで、

しきりに褒めたり機嫌をとったりするような場合である。





投影

projection

 自分のなかにある受け入れがたい不快な感情や性格を、

他者が持っているかのように知覚することである。

たとえば、怒りっぽい人が、自らの怒りの感情を受け入れず、

それを他者に投影して逆に他者が自分に対して

怒っているのだと決めつけるような場合である。









取り入れ

introjection

一定の対象、その属性を

心理的に自己の内部に取り入れることをいう。

ある対象(他者)との結びつきを求める欲動が、

何らかの困難に遭遇してあきらめざるを得ないとき、

その他者を模倣し、その人と同じように考え、

感じ、ふるまうことによって、その人を内に取り込む。

この取り込みによって、

その他者との結びつきを果たそうとするのである
(これは、同一視 identification と呼ばれる)。

たとえば、自分に自信のない人が、芸能人など憧れの人を模倣し、

その人と同じような格好をしたり話し方を真似たりする場合である。

 なお、取り入れには、同一視の他、

口唇による「体内化」(incorporation)も含まれる。





衝動の自己への向き換え

turning the impulse against the self

特定の対象に対する強い衝動(怒りであることが多い)を

自分自身に対して向き換えること。

自我はこの怒りの感情が意識に上ることを恐れているのであり、

真面目な人が隠された怒りを自分自身に向け、

抑うつ的・自虐的に陥ることが多い。





転倒

reversal into opposite

特定の対象に対する感情が正反対の感情に置き換わること。

たとえば、ある女性と深い関係になることを強く欲しているが、

そうした自身の欲動を恐れている男性がいる。

男性は、相手の女性が自分と友人以上の関係を望んでいないことを感じ、

女性に対して強い怒りや恨み感情を抱くようになったというような場合である









フロイトは、防衛機制と精神症状の間には、緊密な関係があると考えた。

たとえば、器質的病変の認められない機能障害であるヒステリー

(例:医学的に異常がないにも関わらず、

麻痺や感覚消失などの身体症状を生じる。

現在の診断基準では、

転換性障害や解離性障害として分類される)では

抑圧が、また上述の強迫性障害では、

退行および反動形成、隔離、打消しなどの機制が働き、

さらに特定の対象を必要以上に脅威としてみなす

恐怖症や妄想性障害では、これらの機制に加えて投影が、

うつ病では取り入れ(同一視)といった防衛機制が、

症状形成や固着に大きく関与すると考えた。





フロイト以後の防衛機制論

 その後、フロイトの娘であるアンナ・フロイト (Anna Freud, 1895-1982) は、

フロイトの防衛機制論を発展させ、

昇華 (sublimation) を新たに加えた10種類の防衛機制を提唱している。

この他、学説によってさまざまな分類が可能だが、

グリート・ビブリング
(Grete L. Bibring (1899-1977) による分類も有名である。





昇華

sublimation

受け入れがたい衝動を社会的に価値のある行動、

特に創造的な活動に変化させることである。

たとえば、父親に対する強い怒りを抱いている人が、

勉学に励み、外科医になることなどがこれに当たる。





抑圧

一言に抑圧といっても、含まれる心的働きは幅広い。

たとえば、ヒステリー症状や、

意識・記憶・パーソナリティの不連続性を示す解離性症状
(dissociative symptoms) は、

もともとは抑圧から生じた精神症状であるとフロイトは記述している。



注:アーネスト・ヒルガード (Ernest R. Hilgard, 1904- 2001) は、

解離を抑圧とは異なる機制として位置付けている。









たとえば解離症状は、トラウマ体験の記憶を抑圧し、

こころの奥深くにしまい込む、

心的外傷後ストレス障害(PTSD)においても認められる。

解離症状が優勢なPTSD患者では、トラウマ体験想起時に、

扁桃体活動や島で活動の低下がみられるのに対し、

内側前頭前皮質(mPFC)や前帯状皮質 (ACC) の吻側部(rACC)では

活動の増加がみとめられるという。




一般的に、交感神経系の活動亢進がみとめられる不安障害では、

情動刺激処理時には、扁桃体や島の活動は増加しており、

mPFCやrACCの活動は低下している。

これは、通常mPFCやrACCは情動中枢である扁桃体や身体感覚への

気づきを司る島の働きを制御しているが、

不安障害ではその機能が低下して、

扁桃体や島の過剰活動を制御できなくなっているためと考えられている。



しかし、解離症状主体のPTSDは、これとは正反対のパターンを示すのである。

このことから、解離において過剰に働いているのはむしろmPFCやrACCで、

扁桃体や島は本来あるべき機能を果たすことができない状態に陥っている、

という可能性が指摘されている。










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